YouTubeチャンネル「KENZO 新宿109」で、詐欺の疑いがある人物や事業者への突撃動画を投稿してきたKENZOさんが、2026年10月14日、名誉毀損の疑いで逮捕されました。
以下のような突撃動画が人気を博していた人物です。
玄ちゃんとしては、彼のことはちょっと過激な正義の味方、という印象もなかったわけではありません。
これまで詐欺被害の防止を掲げて活動してきただけに、「詐欺を告発する動画なのになぜ逮捕されたの?」「本当のことを言っていても違法になるの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、詐欺の疑いを告発すること自体が直ちに違法になるわけではありません。しかし、特定の人物について社会的評価を下げる事実を公然と示した場合、名誉毀損罪が問題になることがあります。
刑法230条は、原則として、示された事実が真実かどうかにかかわらず名誉毀損罪が成立し得ると定めています。
一方、刑法230条の2には、公共性や公益目的、真実性などの条件を満たす場合に処罰しない特例もあります。[出典1]
今回の事件では、2025年6月に投稿された動画で、京都市の不動産会社の元代表について、詐欺行為を行ったかのようなテロップや発言を掲載したことが問題視されています。[出典3・4]
この記事では、報道で確認できた具体的な表現をもとに、名誉毀損の仕組み、公益目的の例外、対象者が亡くなった後の告訴、同日に報じられた恐喝未遂事件との違いを解説します。
※本記事は2026年10月14日時点の情報をもとにしています。逮捕は有罪判決を意味せず、KENZOさんの刑事責任が確定したわけではありません。
KENZO新宿109はなぜ名誉毀損容疑で逮捕された?
2026年10月14日、京都府警左京署は、YouTuber「KENZO 新宿109」として活動する池田実貴容疑者を名誉毀損の疑いで逮捕しました。
共同通信や時事通信によると、問題となったのは2025年6月に投稿されたYouTube動画です。[出典3・4]
動画には、京都市左京区の不動産会社で代表を務めていた男性の画像とともに、詐欺行為を行った人物であるかのようなテロップや発言が掲載されていたと報じられています。
問題となったのは2025年6月の動画
共同通信によると、動画では男性について「巨額M&A詐欺師か」とのテロップが表示され、「組織ぐるみの犯行だ」とする発言もあったとされています。[出典3]
時事通信は、2025年6月14日ごろに投稿された動画について、男性の画像とともに「有名実業家の裏の顔。巨額M&A詐欺師か」というテロップが使われていたと報じています。[出典4]
警察は、こうした動画の投稿によって男性の名誉を傷つけた疑いがあるとして捜査しています。
ただし、動画内の表現が法律上どのように評価されるかは、今後の捜査や司法手続きによって判断される問題です。
KENZOは容疑を認めている?
共同通信によると、KENZOさんは逮捕後、弁護士と話し合ってから説明するという趣旨の発言をし、認否を留保しています。[出典3]
したがって、今回の逮捕について「本人が名誉毀損を認めた」とは言えません。
また、今回の調査では、2026年10月14日時点で起訴や有罪判決が確定したという情報は確認できませんでした。
KENZOの動画では何が問題視された?具体的な発言とテロップ
今回の事件で特徴的なのは、警察が問題視したと報じられている表現が、比較的具体的に明らかになっていることです。
共同通信と時事通信の報道を整理すると、次のようになります。
| 動画の表現 | 報道で確認できる内容 | 法律上の主な論点 |
|---|---|---|
| 「僕の職業は、詐欺師です」 | 男性の画像とともに表示されたテロップ | 特定人物への犯罪行為の印象づけ |
| 「巨額M&A詐欺師か」 | 動画内のテロップ | 疑問形でも社会的評価を下げ得るか |
| 「有名実業家の裏の顔」 | 動画内のテロップ | 前後の表現と合わせた印象 |
| 「組織ぐるみの犯行だ」 | 動画内での発言 | 組織的な犯罪行為を示す内容か |
[出典3・4]
右列は刑法230条を踏まえた一般的な論点の整理であり、これらの表現について裁判所が違法と認定したという意味ではありません。
「詐欺師か」と疑問形にすれば問題ない?
「詐欺師だ」と断定するのではなく、「詐欺師か」と疑問形にしていれば問題ないのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
名誉毀損に当たるかどうかは、語尾だけでなく、動画全体の内容や、視聴者が受け取る意味などを踏まえて判断されます。
例えば、特定の人物の顔を示し、犯罪に関与したかのような説明を繰り返していれば、疑問形を使っていても社会的評価を下げる内容と受け取られる可能性があります。
ただし、今回の動画全体を通じて、どの表現がどのように評価されるかについては、公開情報だけでは結論を出せません。
「組織ぐるみの犯行」という表現の重さ
共同通信が報じた「組織ぐるみの犯行だ」という発言は、単なる感想ではなく、複数の人物が関わる犯罪行為があったと受け取られ得る表現です。[出典3]
そのため、名誉毀損の検討では、こうした発言を裏付ける具体的な事実があるのかが重要になります。
一方、報道に登場する男性や関係会社について、詐欺行為が実際にあったと確定した資料は、今回の調査では確認できませんでした。
詐欺師への告発動画でも名誉毀損になる?
詐欺の疑いがある人物を告発する動画でも、名誉毀損罪が成立する可能性はあります。
その根拠となるのが刑法230条です。
刑法230条が定める名誉毀損とは
刑法230条1項は、公然と事実を示して人の名誉を傷つける行為を処罰対象としています。
ここでいう名誉とは、本人の気持ちだけではなく、社会から受ける客観的な評価を指します。[出典1]
名誉毀損罪を考えるうえでは、主に次の点が問題になります。
| 要素 | 内容 | YouTube動画での論点 |
|---|---|---|
| 公然性 | 不特定または多数の人に伝わる状態 | 一般公開された動画 |
| 事実の摘示 | 具体的な事実を示すこと | 特定人物が詐欺行為をしたという趣旨の説明 |
| 社会的評価の低下 | 他人からの評価を下げること | 犯罪行為に関与した人物という印象 |
[出典1]
一般公開されたYouTube動画は、多数の視聴者に届くため、公然性が問題になりやすい媒体です。
ただし、これらの要素が個別事件で満たされるかは、動画全体の内容などを踏まえて判断されます。
詐欺の疑いを伝えること自体は禁止されていない
ここで誤解してはいけないのは、刑法が詐欺の疑いについて情報発信することを一律に禁止しているわけではないという点です。
消費者被害の防止につながる情報には、社会的な意義があります。
ただし、被害防止の目的があるからといって、根拠を十分に確認せず特定人物を犯罪者と決めつけてよいわけではありません。
問題となるのは、告発の目的だけでなく、示した事実の内容や根拠、発信の仕方なのです。
動画の内容が本当なら名誉毀損にならない?
「本当のことを言っているなら名誉毀損ではない」と考える人もいるかもしれません。
しかし、刑法230条1項は、示した事実が真実であっても、名誉毀損罪が成立し得る仕組みになっています。[出典1]
その一方で、刑法230条の2には、一定の条件を満たす場合に処罰しない特例があります。
公共性・公益目的・真実性が重要
刑法230条の2第1項は、公共の利害に関する事実について、専ら公益を図る目的があり、真実であることが証明された場合には処罰しないと定めています。[出典1]
整理すると、次の三つが重要です。
| 条件 | 意味 | 詐欺告発動画での論点 |
|---|---|---|
| 公共性 | 社会全体に関係する事実か | 消費者被害の防止に関わるか |
| 公益目的 | 主な目的が公共の利益にあるか | 被害防止を目的としていたか |
| 真実性 | 示した重要な事実が真実と証明できるか | 犯罪行為を裏付ける証拠があるか |
[出典1]
また、刑法230条の2第2項は、起訴されていない人の犯罪行為に関する事実についても、公共の利害に関する事実とみなすと定めています。
つまり、まだ起訴されていない人物の行為について告発したからといって、それだけで公共性が否定されるわけではありません。
ただし、公共性が認められることと、発信内容が真実であることは別の問題です。
真実だと信じていた場合はどうなる?
最高裁判例では、真実であることが証明されなかった場合でも、確実な資料や根拠に照らし、真実だと信じたことに相当な理由があれば、名誉毀損罪の故意が否定され得るという考え方が示されています。[出典5]
ただし、「本人が本当だと思っていた」という主観的な説明だけで足りるわけではありません。
どのような資料を確認し、何を根拠に発信したのかが重要になります。
今回のKENZOさんの事件で、この考え方が適用されるかについては、公開情報から判断できません。
詐欺撲滅を目的にしていても違法になる?
KENZOさんは「詐欺撲滅」を掲げ、多数の動画を公開してきたYouTuberです。
時事通信によると、2026年10月14日時点で、投稿動画は700本を超え、チャンネル登録者は約103万人に上っていました。[出典4]
詐欺の疑いがある事業者などに直接質問する活動は、消費者被害への注意喚起という観点から関心を集めてきました。
しかし、活動全体の目的と、個々の動画の法的評価は分けて考える必要があります。
公益目的があっても内容の裏付けは必要
例えば、被害を防ぐために動画を公開したとしても、特定人物について犯罪行為があったと述べる場合には、内容を裏付ける資料が重要になります。
刑法230条の2は、公益目的だけで処罰を免れる仕組みではありません。
公共性や真実性なども問題になります。[出典1]
告発活動の意義と表現の適切さは別問題
消費者被害の防止を目指す活動には、社会的な価値があり得ます。
一方、告発の対象となった人物にも、根拠のない犯罪者扱いによって社会的評価を傷つけられない利益があります。
玄ちゃんは、今回の事件を考えるうえで、詐欺を告発することの是非と、告発の方法が適切だったかという二つを分ける必要があると考えています。
問題を指摘する活動だからこそ、情報の正確性や裏付けが重要になるのではないでしょうか。
動画の相手が亡くなった後でも告訴できる?
今回の事件では、動画の対象となった男性が、投稿後に亡くなっていることも報じられています。
共同通信によると、動画は2025年6月に投稿され、男性は同年7月ごろに亡くなりました。
その後、男性の母親が告訴したとされています。[出典3]
ここで重要なのは、動画が投稿された時点では、男性が存命だったという点です。
刑事訴訟法233条は遺族による告訴を認めている
刑法232条は、名誉毀損罪について、原則として告訴がなければ起訴できないと定めています。[出典1]
これを「親告罪」といいます。
一方、刑事訴訟法233条2項は、名誉毀損の被害者が告訴せずに亡くなった場合、一定の親族や子孫が告訴できると定めています。
ただし、被害者が明確に示していた意思に反する告訴は認められません。[出典2]
今回、男性の母親が告訴したという報道は、この制度と関係するものです。
亡くなった人への名誉毀損とは別の問題
刑法230条2項には、亡くなった人の名誉を毀損した場合について、虚偽の事実を示した場合でなければ処罰しないという規定があります。[出典1]
しかし、今回報じられた動画は、男性が存命だった2025年6月に投稿されています。
したがって、亡くなった人について後から発信した場合の規定を、そのまま今回の事件に当てはめることはできません。
| 比較項目 | 存命中に投稿された動画 | 亡くなった後に投稿された動画 |
|---|---|---|
| 主に問題となる規定 | 刑法230条1項 | 刑法230条2項 |
| 事実が真実だった場合 | 230条の2などの検討が必要 | 虚偽の事実を示した場合でなければ処罰されない |
| 告訴 | 被害者本人、一定の場合は親族 | 刑事訴訟法233条に基づく親族など |
| 今回の事件 | こちらに該当する経緯が報道 | 投稿時点では該当しない |
[出典1・2・3]
なお、動画投稿と男性が亡くなったことの間に、法律上どのような因果関係があるかについては、今回確認した報道だけでは判断できません。
KENZOは恐喝未遂容疑でも逮捕された?
2026年10月14日には、KENZOさんの名誉毀損容疑とは別に、恐喝未遂容疑による逮捕も報じられています。
ただし、恐喝未遂容疑で逮捕されたのは、KENZOさん本人ではなく、別の2人の男性です。
時事通信によると、京都府警左京署は、同様の動画を配信すると告げて30億円を脅し取ろうとした疑いで、不動産会社代表の赤木誠容疑者と安田裕貴容疑者を逮捕しました。[出典4]
同じ日の逮捕でも容疑が異なる
| 項目 | KENZOさん | 別の2人の男性 |
|---|---|---|
| 逮捕日 | 2026年10月14日 | 2026年10月14日 |
| 報じられた容疑 | 名誉毀損 | 恐喝未遂 |
| 主な問題 | 動画の投稿内容 | 動画配信を示唆した金銭要求 |
| 金額 | 名誉毀損の容疑自体に30億円の要求は含まれない | 30億円を要求した疑い |
| KENZOさん本人の恐喝未遂容疑 | 今回確認した報道では逮捕されていない | 該当しない |
[出典4]
時事通信は、問題となった動画がKENZOさんのアカウントに投稿されており、警察が関係者同士のつながりについても調べていると報じています。
しかし、警察が関係を調べていることと、KENZOさん自身が恐喝未遂に関与したことが確定したという話は別です。
今回の調査では、KENZOさん本人が恐喝未遂容疑で逮捕されたという情報は確認できませんでした。
KENZO逮捕と名誉毀損の関係まとめ
YouTuber「KENZO 新宿109」として活動するKENZOさんは、2026年10月14日、名誉毀損の疑いで逮捕されました。
問題となったのは、2025年6月に投稿された動画で、京都市の不動産会社の元代表について、詐欺行為を行ったかのようなテロップや発言を掲載したとされる点です。
ただし、逮捕は有罪判決ではなく、KENZOさんの刑事責任が確定したわけではありません。
今回の事件からわかる法律上の重要な点は、次のとおりです。
- 詐欺の疑いを告発する動画でも、名誉毀損が問題になる可能性がある
- 発信した内容が真実でも、名誉毀損罪が成立し得る
- 公共性・公益目的・真実性などの条件を満たせば、処罰されない場合がある
- 動画の対象者が投稿後に亡くなっても、一定の親族が告訴できる
- 同日に報じられた恐喝未遂事件は、別の2人が逮捕された事件である
玄ちゃんは、今回の事件を「詐欺を告発する活動が禁止された」と理解するのは正確ではないと考えています。
消費者被害を防ぐための情報発信には意義がある一方、特定の人物を犯罪者として扱うような表現には、相応の根拠と慎重さが求められます。
今後、KENZOさんの動画についてどのような司法判断が示されるのか、引き続き確認する必要があります。
参考資料・情報源一覧
本記事は、以下の法令と報道を参考に作成しています。(2026年10月14日時点)
公的資料・法令
- [出典1]e-Gov法令検索|刑法・名誉毀損と公共性の特例
- [出典2]e-Gov法令検索|刑事訴訟法・親族による告訴
- [出典5]最高裁判所|昭和44年6月25日大法廷判決
逮捕・事件に関する報道



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