1961年公開の映画『ナバロンの要塞』。
ドイツ軍が占領する島へ少人数の特殊部隊が潜入し、洞窟の中に設置された巨大な大砲を爆破する。
いかにも「映画らしい」話です。

では、どこまで本当なのでしょうか。
結論から言うと、
ナバロン島は架空。巨大砲爆破作戦も架空です。
しかし、その背景となる1943年のエーゲ海では、映画を思わせる出来事が実際に起きていました。
島をめぐる連合軍とドイツ軍の攻防。
沿岸砲。
イギリス軍特殊部隊。
ギリシャ人特殊部隊。
島への秘密上陸。
軍事施設への破壊工作。
つまり『ナバロンの要塞』は「実話映画」ではありませんが、
第二次世界大戦の実在する材料を集め、極上の冒険映画へ組み直した作品
と考えるのが一番近そうです。
私が初めてこの映画を観たのは、小学4年生の時でした。
1986年3月10日、TBS『月曜ロードショー』で放送された『ナバロンの要塞』です。
冒頭から間もなく始まる、マロリーたちの断崖絶壁のクライミング。
落ちるのではないか。
見つかるのではないか。
ドイツ兵が上で歩いている。
あの緊張感にすっかり引き込まれました。
その後、大人になってからはレンタルビデオで何度も借り、10年間で10回以上は観たと思います。
今では配信でいつでも観られますが、それでも年に一度くらい観ています。
つまり私にとって『ナバロンの要塞』は、「昔観た名作」ではありません。
人生のかなり長い期間、繰り返し観続けている映画です。
そんな作品だからこそ、今回は子供の頃には気にも留めなかった細部まで調べてみました。
- 『ナバロンの要塞』は実話なのか?
- 本当にナバロン砲のような巨大砲は存在した?
- マロリーのような「特殊技能を持った軍人」は本当にいた?
- スタブロのようなギリシャ人特殊戦闘員も実在した
- マロリーのような「変わった経歴の軍人」は珍しかった?
- スタブロは大佐|イギリス軍の大佐と同格なの?
- マロリーたちの変わった機関銃は何?
- 実は「ニセSTEN」も混ざっている
- ドイツ兵がMP40を持ちすぎ問題
- ドイツ軍戦車がどう見てもドイツ戦車じゃない
- なぜこんなことになった?
- 兵器は間違っているのに、なぜリアルに見える?
- あの断崖絶壁、本当に登っていた?
- なぜ1961年の特撮が今でも結構すごい?
- 巨大砲は実物大だった
- 1961年なのに、なぜ今観てもハラハラするのか?
- 実はアクション以上に面白い「マロリーvsミラー」
- マロリーとスタブロが妙にダンディなのはなぜ?
- 『アンジェントルメン』は『ナバロン』へのオマージュ?
- あのテーマ曲はなぜスカになった?
- The Skatalites版が別の生命を与えた
- 『ナバロンの要塞』は公開当時から評価されていた?
- 65年前の映画なのに「現役感」がある理由
- 40年観続けても飽きない映画
- まとめ|『ナバロンの要塞』は「ウソの作戦」で本物の戦争を描いた映画
- 参考資料・情報源一覧
『ナバロンの要塞』は実話なのか?
まず一番重要なところから。
ナバロン島という島は実在しません。
原作はアリステア・マクリーンが1957年に発表した小説『The Guns of Navarone』。
物語そのものはフィクションです。[出典1]
ただし、完全な空想世界ではありません。
背景となっているのは1943年のドデカネス諸島戦役(Dodecanese Campaign)です。
イタリアが1943年9月に連合国へ降伏すると、それまでイタリアが支配していたエーゲ海の島々をめぐり、イギリスを中心とする連合国とドイツ軍が争いました。
その中でも重要だったのが、
レロス島の戦い
です。

引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/ドデカネス諸島戦役
レロスでは1943年9月26日からドイツ軍による激しい空襲が続き、11月12日に上陸作戦が開始。
11月16日には連合軍側が降伏しました。[出典2]
映画の、
「ドイツ軍が支配するエーゲ海の島」
「島に強力な沿岸砲がある」
「連合軍が危機に陥っている」
という大枠には、かなり現実の1943年エーゲ海戦線の空気が入っています。
史実と映画を並べるとこうなる
| 映画 | 史実 |
|---|---|
| ナバロン島 | 架空 |
| 1943年エーゲ海 | 史実 |
| ドイツ軍による島嶼支配 | 史実 |
| 島の沿岸砲 | 実際に存在 |
| 連合軍とドイツ軍の島嶼戦 | 実際に発生 |
| マロリーたち | 架空 |
| 巨大砲爆破作戦 | 架空 |
| 少人数による島への潜入・破壊工作 | 類似する特殊作戦は実在 |
つまり、
「実話を映画化した」のではなく、「実際に存在した戦場へ架空の特殊作戦を放り込んだ」
映画なのです。
本当にナバロン砲のような巨大砲は存在した?
映画最大の主役とも言えるのが、洞窟内に設置された2門の巨大砲です。

引用 https://www.warhistoryonline.com/featured/the-guns-of-navarone.html
巨大な砲身。
砲弾。
複雑な機械。
あれだけで秘密基地感があります。
ではレロス島に、本当にあんな巨大砲があったのでしょうか。
映画と同じものがあったわけではありません。
レロス島には実際に多数の沿岸砲台がありましたが、資料では152mm級をはじめとする沿岸砲が確認されています。[出典1・2]
映画に登場する大砲は、それよりはるかに巨大に見えます。
したがって、
「ナバロンの巨大砲=レロス島に実在した砲」
ではありません。
ただし第二次世界大戦当時、あのスケール感に近い巨大沿岸砲そのものが荒唐無稽だったわけでもありません。
ドイツ占領下のガーンジー島には、旧ロシア製305mm艦砲を転用したBatterie Mirusが設置されていました。
つまり、
「島に巨大な長射程砲を置いて海峡を支配する」
という発想自体は十分現実的だったわけです。
映画は、レロスの沿岸砲という史実を、当時実在したさらに巨大な沿岸砲のイメージまで膨らませたと考えると分かりやすいでしょう。
マロリーのような「特殊技能を持った軍人」は本当にいた?
マロリーは軍人である以前に、一流の登山家という設定です。
だから、
「普通の部隊が上陸できないなら、誰も登れない崖から入ろう」
という作戦になる。
爆薬の専門家ミラー。
ギリシャ人で戦闘能力の高いスタブロ。
通信担当。
船舶に詳しい人間。
それぞれ違う技能を持つ人間を集めています。
いかにも映画的ですが、第二次世界大戦では実際に、こうした専門技能を持つ人材を使った特殊作戦が盛んに行われました。
イギリスにはCommandos、SAS、SBS、SOEなど、通常の歩兵部隊とは異なる任務を担う組織が存在しました。
特にエーゲ海では、SBSなどが島嶼への襲撃作戦を実施しています。
さらに興味深いのが、
ギリシャ軍にも特殊部隊が存在したことです。
スタブロのようなギリシャ人特殊戦闘員も実在した
ギリシャには第二次世界大戦中、
Sacred Squadron(聖隊/Ieros Lochos)
という精鋭部隊が存在しました。
しかも構成員の多くが将校や下士官でした。
部隊は英軍特殊部隊と協力し、エーゲ海の島々で活動しています。[出典3]
その任務には、
沿岸砲陣地。
通信線。
発電設備。
燃料タンク。
無線施設。
探照灯。
船舶。
などの破壊も含まれていました。[出典3]
……かなり『ナバロンの要塞』です。
もちろん、
「マロリーのモデルはこの隊員」
「スタブロのモデルはこの人物」
と特定できるわけではありません。
しかし、
少人数の英軍・ギリシャ人特殊戦闘員がエーゲ海の島へ潜入してドイツ軍施設を破壊する
という作戦そのものは、決して映画だけの世界ではなかったのです。
むしろ今回調べて、ここが一番驚きました。
マロリーのような「変わった経歴の軍人」は珍しかった?
特殊作戦の世界には、戦前の職業や趣味で得た技能を軍事任務へ転用した人間もいました。
登山、スキー、語学、無線、船舶、爆薬、地理への知識。
通常戦では脇役になりそうな能力が、特殊作戦では決定的な武器になる。
したがって、
「一流登山家だから特殊作戦に抜擢されたマロリー」
という人物造形はフィクションではあるものの、特殊作戦という世界の発想としては不自然ではありません。
ただし今回の調査では、
「マロリーには特定の実在モデルがいた」
と確定できる一次資料は確認できませんでした。
そこは区別しておきます。
スタブロは大佐|イギリス軍の大佐と同格なの?
Anthony Quinn演じるAndrea Stavrosはギリシャ軍のColonel、つまり大佐として描かれます。
ではイギリス軍のColonelと同じなのでしょうか。
階級表上では、おおむね同等と考えてよいです。
ただし重要なのは、
階級が同等=イギリス軍部隊を自由に指揮できる
という意味ではないこと。
連合国同士でも、それぞれ別の軍隊です。
しかもマロリーはCaptain、FranklinはMajor。
したがって階級章だけ比較すれば、Stavrosはマロリーより上です。
ところが任務の指揮系統は別問題。
映画でStavrosがマロリーの命令下で動くことに矛盾があるとは限りません。
多国籍特殊作戦では、
「誰が階級上位か」と「今回の作戦指揮官は誰か」は必ずしも一致しない
からです。
このあたりも、映画を何度も観ると気になってくる部分です。
マロリーたちの変わった機関銃は何?
子供の頃から妙に気になる銃があります。
マロリー一行が持っている、横から何かが突き出した短機関銃。

引用 https://www.warhistoryonline.com/featured/the-guns-of-navarone.html
他の戦争映画でよく見る銃とは少し形が違います。
あれは主に、
STEN Mk I短機関銃
です。[出典4]
横に突き出している「グリップのようなもの」は、
グリップではなく弾倉です。
STENは9mm弾を使用するイギリス製短機関銃で、弾倉を銃の左側から横向きに差し込みます。
映画では比較的珍しいMk Iが目立つため、後世の戦争映画でよく見る簡素なMk IIなどとは印象が違います。
横の弾倉を握って撃っていいの?
映画では弾倉付近を握って撃っている場面があります。
これは実用上あまり推奨されません。
弾倉に力を加えると給弾不良の原因になる可能性があるためです。
つまり、
銃そのものは本物だが、扱いには映画的な部分もある
ということです。
実は「ニセSTEN」も混ざっている
さらにマニアックな話があります。
『ナバロンの要塞』には本物のSTENだけでなく、
発砲炎を派手に見せるために作られた撮影用STEN
も登場します。[出典4]
ガスを利用して大きなマズルフラッシュを発生させる撮影用プロップです。
よく見ると実銃とは構造が違います。
1961年には現在のようにCGで発砲炎を後から追加できません。
だから、
カメラに映る「銃を撃っている感じ」そのものを物理的に作る必要があった。
これも今観ると面白いポイントです。
ドイツ兵がMP40を持ちすぎ問題
ドイツ兵といえばMP40。

引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/MP40
戦争映画ではおなじみです。
『ナバロンの要塞』にも大量に出てきます。
しかし実際のドイツ軍歩兵全員がMP40を持っていたわけではありません。
MP40は主に下士官や特殊な役割の兵士などへ配備され、一般歩兵の中心的な武器はKar98kなどの小銃でした。[出典4]
つまり映画は、
「ドイツ兵らしく見える銃」
としてMP40をかなり多めに配置しています。
これは後世の戦争映画でもよくある視覚的な記号化です。
ドイツ軍戦車がどう見てもドイツ戦車じゃない
ミリタリー好きなら、こちらの方がはるかに気になるでしょう。
映画に登場するドイツ軍の戦車や装甲車。
実は、
アメリカ製です。
確認できる車両には、
- M24 Chaffee軽戦車
- M8 Greyhound装甲車
などがあります。[出典5]
当然、ドイツ軍のPanzer IVやStuGなどではありません。
しかもM24は1944年から実戦投入された車両。
映画の設定は1943年です。
つまり、
国籍も年代も違います。
時代考証としてはかなり大胆です。
なぜこんなことになった?
理由は映画制作の現実にあります。
撮影はギリシャのRhodes島などで行われました。
J・リー・トンプソン監督自身が後年、
ギリシャ陸海軍から軍用車両などの協力を受けた
と証言しています。[出典6]
さらに約1,000人のギリシャ兵がドイツ兵役のエキストラとして参加しました。[出典7]
つまり、
「1943年型ドイツ戦車を完璧に再現しよう」
ではなく、
「現地で実際に動かせる軍用車両を使おう」
という1960年代的大作映画の作り方だったわけです。
2026年のミリタリー映画ならかなり目立つでしょう。
しかし不思議なのは、『ナバロンの要塞』ではそこまで作品世界が壊れないことです。
兵器は間違っているのに、なぜリアルに見える?
ここがこの映画の面白いところです。
個々の兵器をチェックすると間違いがある。
ところが映画全体を見ると、
妙に本物っぽい。
理由の一つは、本当にギリシャで撮影していること。
もう一つは、本物の軍人が大量に画面へ入っていること。
さらに本物の軍用車両や艦艇を大量に使っていることです。
つまり、
細部の型式は間違っていても、画面を構成する「物質」が本物
なのです。
CGで正確なPanzer IVを作れる現代とは逆。
1961年の『ナバロン』は、
間違った本物
を使っています。
この違いはかなり面白いと思います。
あの断崖絶壁、本当に登っていた?
私が小学4年生の時、一発でこの映画に引き込まれた場面です。
嵐の夜。
マロリーたちは、ドイツ軍が「人間には登れない」と考えている断崖絶壁からナバロン島へ侵入します。
1961年の映画なのに、今観ても結構怖い。
「本当に登っているのか?」
と思います。
答えは意外です。
かなりの部分がスタジオ撮影です。
J・リー・トンプソン監督本人によれば、Shepperton Studiosの床に岩場を作り、
俳優たちは実際にはほぼ水平のセット上を這っていました。[出典6]
カメラの向きを変え、背景映像などを組み合わせることで、
「垂直な断崖を登っている」
ように見せたのです。
これは知った時、かなり驚きました。
40年近く何度も観てきたのに、子供の頃から完全に騙されていたわけです。
なぜ1961年の特撮が今でも結構すごい?
『ナバロンの要塞』は第34回アカデミー賞で、
特殊効果賞を受賞しています。[出典8]
しかも作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞、音響賞、音楽賞など計7部門にノミネートされました。
巨大砲。
嵐。
船。
爆発。
崖。
洞窟。
その多くを、
実物大セット。
ミニチュア。
マットペインティング。
光学合成。
カメラアングル。
実景。
によって組み合わせています。
CGのように「存在しないものを完全に生成する」のではなく、
カメラの前に何かを本当に置き、それを別の何かと組み合わせる。
そのため2026年に観ても、
「古いけれど、妙に質量がある」
映像になっています。
巨大砲は実物大だった
さらに驚くことに、砲台内部の巨大砲は実物大セットでした。
トンプソン監督によれば、Sheppertonに作られた砲台セットは当時、
イギリス映画史上最大級のセット
だったとされています。[出典6]
砲が発射される場面もフルスケール。
だから砲身や機械の「重さ」が画面から伝わります。
今観ても秘密基地に入っていく感じが薄れないのは、この物理的な巨大さも大きいでしょう。
1961年なのに、なぜ今観てもハラハラするのか?
これは史実ではなく、長年観続けてきた一人のファンとしての分析です。
私は最大の理由を、
「次の問題がすぐ発生する脚本」
だと思っています。
崖を登る。
成功。
ところが仲間が負傷。
船を失う。
潜入する。
今度はドイツ軍。
逃げる。
味方と合流。
ところが内通者がいる。
爆薬を仕掛けようとする。
今度は別の問題。
つまり、
一つ解決するたび、次の障害が発生する。
約2時間半の長編なのに「目的地へ向かって進んでいる感覚」が途切れません。
これは現代のミッション型アクション映画でも使われる構造です。
実はアクション以上に面白い「マロリーvsミラー」
何度も観るようになると、爆発より好きになる場面があります。
要塞へ突入する前夜。
David Niven演じるMillerとGregory Peck演じるMalloryが激しく言い争う場面です。
MillerはMalloryの判断によって仲間が犠牲になることへ怒りをぶつける。
Malloryは指揮官として、
「では他にどうすればよかった?」
と返す。
ここで映画は単純な英雄物語ではなくなります。
任務を成功させるためなら仲間を犠牲にしてよいのか。
指揮官は冷酷でなければならないのか。
正しい判断とは何なのか。
小学4年生の頃は崖登りが好きでした。
大人になって何度も観ると、こういう会話の方が面白くなる。
同じ映画なのに、自分の年齢によって面白い場所が変わる。
これも40年間観続けられた理由なのだと思います。
マロリーとスタブロが妙にダンディなのはなぜ?
序盤のMalloryとStavros。
スーツ姿です。
戦争映画なのに、やたら格好いい。
Gregory PeckとAnthony Quinnなので当然といえば当然ですが、
「本当に軍人なのか?」
と思うほどダンディです。
しかし、これも特殊作戦ものとして考えると面白い。
彼らは最前線の歩兵小隊として登場するのではなく、
軍人・民間人・工作員の境界を行き来するスペシャリスト
として描かれています。
制服だけでキャラクターを説明しない。
この「軍人なのに軍人映画っぽくない」雰囲気が、後の特殊作戦映画につながる魅力でもあります。
『アンジェントルメン』は『ナバロン』へのオマージュ?
2024年のGuy Ritchie監督作『The Ministry of Ungentlemanly Warfare(邦題:アンジェントルメン)』を観て、
「ナバロンっぽい」
と感じた人はいると思います。
少人数。
個性的なスペシャリスト。
第二次世界大戦。
通常部隊ではできない秘密任務。
破壊工作。
ナチス支配地域への潜入。
確かに構造は非常によく似ています。
しかし今回の調査では、
Guy Ritchie監督や制作陣が『ナバロンの要塞』を直接オマージュしたと明言した信頼できる資料は確認できませんでした。
したがって、
「『アンジェントルメン』は『ナバロン』へのオマージュ作品」
とは断定できません。
むしろ両作品が、
第二次世界大戦で実在したイギリス特殊作戦という同じ歴史的土壌から生まれている
ため、似た構造になっていると見る方が安全です。
ただし映画ジャンルとして、
『ナバロンの要塞』
→『荒鷲の要塞』
→『特攻大作戦』
→現代の特殊作戦アクション
という系譜を感じることはできます。
あのテーマ曲はなぜスカになった?
そして『ナバロンの要塞』を語るなら音楽です。
作曲はDimitri Tiomkin。
あの、
「これから巨大な冒険が始まる」
という壮大なメロディーです。
Tiomkinの音楽は高く評価され、1962年のGolden Globeでは、
Best Original Scoreを受賞しました。[出典9]
アカデミー賞でも音楽賞にノミネートされています。[出典8]
ところが面白いことが起こります。
数年後、ジャマイカへ渡って、
スカになってしまう。
The Skatalites版が別の生命を与えた
ジャマイカを代表するスカバンド、
The Skatalites
が「Guns of Navarone」を録音。
1965年にリリースされ、英国では1967年にヒットしました。[出典10]
映画の壮大なオーケストラ曲が、
ホーン。
ベース。
ドラム。
裏打ちのリズム。
によって陽気なスカへ変身します。
ところがメロディーが強烈なので、全然壊れない。
むしろ、
「この曲、最初からスカだったのでは?」
と思うほどハマっています。
その後The Specialsなども演奏。
結果として「Guns of Navarone」は、
映画音楽を知らないスカファンにも知られるスタンダード曲
のような存在になりました。[出典11]
だから後年、
「ナバロンのテーマ=スカバンドが演奏する曲」
というもう一つの文化が生まれたわけです。
これも1961年の映画が現在まで残した、意外な遺産です。
『ナバロンの要塞』は公開当時から評価されていた?
これはYESです。
Sony Pictures自身も現在、本作をMacLean映画化作品の代表作であり、偉大なアクション/アドベンチャー大作の一つとして紹介しています。[出典12]
公開当時も大規模なヒット作となりました。
制作費は約600万ドル。
当時のColumbia Picturesとして過去最大級の製作費だったことがAFI資料から確認できます。[出典13]
Golden Globeではドラマ作品賞と音楽賞を受賞。[出典9]
Academy Awardsでは7部門にノミネートされ、特殊効果賞を受賞しました。[出典8]
つまり、
「昔だから名作扱いされている映画」ではありません。
1961年の時点ですでに、
「とんでもなく大掛かりな映画が出てきた」
と評価されていた作品なのです。
65年前の映画なのに「現役感」がある理由
2026年現在、『ナバロンの要塞』は65年前の映画です。
それでもSony Picturesでは4K Ultra HDなど現行フォーマットで提供されています。[出典12]
Rotten Tomatoesでも現在、批評家92%、観客86%という高い評価を維持しています。[出典14]
なぜでしょう。
私は四つあると思います。
第一に、目的が異常に分かりやすい。
「巨大砲を壊せ。」
以上。
第二に、登場人物それぞれに役割がある。
登山家。
爆破専門家。
ギリシャ人戦闘員。
通信。
船。
指揮官。
現代のチーム型アクションそのものです。
第三に、問題が連鎖する。
崖。
嵐。
負傷。
ドイツ軍。
裏切り。
爆薬。
タイムリミット。
だから長尺でも止まりません。
第四に、人間関係が単純ではない。
MalloryとStavros。
MalloryとMiller。
裏切り者。
任務と友情。
「仲良し特殊部隊が敵を倒すだけ」ではありません。
40年観続けても飽きない映画
1986年3月10日。
小学4年生だった私はTBS『月曜ロードショー』でこの映画を観ました。
その放送日の記録も現在確認できます。[出典15]
あれから約40年。
レンタルビデオ。
DVD。
配信。
見る方法は変わりました。
でも映画は同じです。
小学4年生の私は、崖から落ちないか心配していた。
大人になった私は、MalloryとMillerの口論を見る。
ミリタリーに興味を持てば、
「この戦車、ドイツ軍じゃないぞ」
となる。
映画制作に興味を持てば、
「この崖、床だったのか!」
となる。
音楽を調べれば、
「なぜジャマイカでスカになった?」
となる。
歴史を調べれば、
「待てよ、Sacred Squadronってほとんどナバロンじゃないか」
となる。
つまり、
観るたびに別の入口が現れる映画なのです。
まとめ|『ナバロンの要塞』は「ウソの作戦」で本物の戦争を描いた映画
今回調べてみて、最初に思っていたより史実との距離が近いことに驚きました。
ナバロン島は存在しません。
マロリーも架空。
巨大砲破壊作戦も架空。
戦車の時代考証にはかなり無理があります。
ドイツ兵はMP40を持ちすぎています。
つまりミリタリー考証100点の映画ではありません。
ところが一段引いて見ると、
1943年のドデカネス戦役。
レロス島。
沿岸砲。
イギリス特殊部隊。
ギリシャSacred Squadron。
エーゲ海の島嶼襲撃。
軍事施設への破壊工作。
という、
本当にあった歴史が骨格を作っています。
だから荒唐無稽なのに、完全なファンタジーには見えないのでしょう。
そして映像も同じです。
戦車の種類は間違っている。
でも本物の戦車を走らせる。
ドイツ兵役はギリシャ兵。
でも本物の兵士が1,000人参加する。
崖はセット。
でも本当に巨大なセットを作る。
大砲は架空。
でも実物大で作る。
船はミニチュア。
でも実際の海や艦艇も使う。
「本物とウソを混ぜるのが、とてもうまい。」
これこそ『ナバロンの要塞』の強さなのかもしれません。
小学4年生だった私は、そのウソに完全に騙されました。
そして約40年後。
史実や撮影方法まで知った今も、やっぱり面白い。
むしろ、
どうやって騙されていたのかを知ることで、さらに面白くなりました。
そういう映画は、なかなかありません。
参考資料・情報源一覧
本記事は以下の映画資料、公的資料、制作関係者インタビューなどを参考に作成しています。(2026年10月6日時点)
史実・軍事史
- [出典1]AlistairMacLean.com|The Guns of Navarone
- [出典2]Leros Military History|The Battle of Leros
- [出典3]Combined Operations|The Sacred Squadron
- [出典4]IMFDB|The Guns of Navarone Firearms
- [出典5]IMCDb|The Guns of Navarone Vehicles
映画制作・評価
- [出典6]The Digital Bits|J. Lee Thompson監督インタビュー
- [出典7]TCM|Behind the Camera – The Guns of Navarone
- [出典8]Academy Awards|The 34th Academy Awards
- [出典9]Golden Globes|The Guns of Navarone
- [出典12]Sony Pictures|The Guns of Navarone
- [出典13]AFI Catalog|The Guns of Navarone
- [出典14]Rotten Tomatoes|The Guns of Navarone
音楽・日本放送



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