作曲と編曲の違いは?メロディー・伴奏・打ち込みの境界を元プロが解説(阪井一生ゴースト問題)

作曲 編曲 違い エンタメ

ピアニスト・作曲家の大浦史記氏がおよそ8年間にわたり、flumpoolのギタリスト・阪井一生氏の依頼でドラマの劇中で使用した楽曲を制作してきたものの、大浦氏の名前がクレジット表記されないまま世に出ていったという経緯から訴訟を起こした、というニュースが入ってきました。

ここで疑問が浮かんでくるのは、

『作曲って一体、何を以て”作曲”というの?』

『作曲と編曲って、何が違うの?』

ということです。

音楽を聴いていると、クレジットに「作曲:○○」「編曲:△△」と書かれていることがあります。

では、メロディーを作った人が作曲家で、伴奏を作った人が編曲家なのでしょうか。

基本的には、その理解で大きく間違っていません。

ただし、実際の音楽制作では、もう少し複雑です。

コード進行を考えた人は作曲者なのか。ギターのフレーズを考えて録音した人はどうなのか。パソコンで打ち込みを使い、曲を完成させた場合は誰が作曲者になるのか。

特に、ドラマの劇伴や映画音楽のようなインストゥルメンタル曲では、作曲と編曲の境界が分かりにくくなることがあります。

玄ちゃんは、かつて約17年間、音楽制作プロダクションに所属し、作曲家、編曲家、ギタリストとして仕事をしていました。

JASRACには私の作曲作品が33件登録されており、編曲についても数百曲の制作に携わってきました。

※玄ちゃんが保管している音楽出版社との間で交わした契約書

今回は、その経験をもとに、作曲と編曲の違いを具体例で解説します。

さらに、JASRACと文化庁の公式資料を参照しながら、共同制作でのクレジットや著作権についても整理していきます。

作曲と編曲の違いとは?

作曲と編曲の違いを簡単に説明すると、次のようになります。

作曲は、曲の核となる音楽的な表現を生み出すこと。編曲は、その音楽をどのような構成や響きで演奏するか具体化することです。

例えば、誰かが鼻歌でメロディーを作ったとします。

そのメロディーをもとに、ピアノ、ベース、ドラム、ギターなどの伴奏を考え、完成した音源に仕上げる作業が編曲です。

歌モノのポピュラー音楽では、このような分担がよく見られます。

ただし、これは音楽制作上の一般的な説明であり、法律上の著作者をすべて自動的に決めるルールではありません。

作曲は曲の核となる音楽的要素を生み出す仕事

歌モノの場合、玄ちゃんが経験してきた制作現場では、歌のメロディーを作った人を作曲者とするのが基本でした。

例えば、歌詞がすでにあり、その歌詞に合わせて新しいメロディーを作ったとします。

この場合、歌詞を作った人は作詞者、メロディーを作った人は作曲者という整理になります。

一方、メロディーだけでなく、曲全体の構成や特徴的な音楽表現を複数人で作り上げることもあります。

その場合は、誰がどの部分を創作したのか、どのような共同制作だったのかを確認する必要があります。

文化庁は、著作者とは著作物を実際に創作した人であると説明しています。[出典1]

つまり、肩書や制作機材だけで作曲者が決まるわけではありません。

編曲は楽曲の構成や響きを具体化する仕事

編曲は、アレンジとも呼ばれます。

例えば、同じメロディーでも、ピアノだけで演奏する場合と、ロックバンドで演奏する場合とでは、曲の印象が大きく変わります。

その違いを作り出すのが編曲の仕事です。

編曲家は、使用する楽器を選び、それぞれの楽器が何を演奏するかを考えます。

ドラムのリズム、ベースライン、ギターの伴奏、ストリングスの動き、イントロや間奏なども、編曲の重要な要素です。

場合によっては、編曲家自身が楽器を演奏したり、パソコンで各パートを打ち込んだりします。

玄ちゃんも、そうした作業を数多く担当してきました。

作曲と編曲の役割を、歌モノの一般的な制作例で整理すると次のようになります。

作業内容一般的な役割注意点
歌のメロディーを作る作曲共同制作の場合もある
歌詞を作る作詞作曲とは別の役割
コード進行を考える作曲・編曲の両方に関係コードだけで作曲者とは限らない
ドラムやベースの伴奏を作る編曲新しい創作的表現が含まれる場合もある
楽器編成を決める編曲曲の響きを具体化する
ギターを録音する演奏演奏しただけで作曲者にはならない
DAWで音源を制作する作曲・編曲・音源制作何を創作したかによって異なる

この表は一般的な制作実務の整理です。個別作品の著作権の帰属を確定するものではありません。

メロディー・コード・伴奏はどこからが作曲?

作曲と編曲の違いで、特に分かりにくいのが、メロディー以外の音楽的要素を誰が考えたかという問題です。

具体的なケースごとに見ていきましょう。

メロディーを作った場合

Aさんが歌のメロディーを作り、Bさんがそのメロディーに伴奏を付けたとします。

一般的な歌モノの制作では、Aさんが作曲者、Bさんが編曲者となるケースが考えられます。

例えば、Aさんがギターで弾き語りをしたデモ音源を作ったとします。

Bさんはそのデモを受け取り、ドラム、ベース、キーボード、ストリングスなどを加えて完成させます。

完成した音源の印象が大きく変わっても、元のメロディーの作曲者が自動的にBさんへ変わるわけではありません。

この違いは、カバー曲を考えると分かりやすいでしょう。

すでに発表された曲を別のアーティストが新しく録音する場合、原曲の作曲者は基本的に変わりません。

一方、新しい録音のために伴奏を組み立てた人は、そのバージョンの編曲者としてクレジットされることがあります。

ただし、既存曲を編曲する際は、原曲の権利者から必要な許諾を得ることも重要です。

JASRACは、編曲権と同一性保持権を管理していないため、編曲の許諾は著作者や音楽出版社などの権利者に確認する必要があると案内しています。[出典2]

コード進行だけを考えた場合

では、Aさんがメロディーを作り、Bさんがコード進行を考えた場合はどうでしょうか。

Bさんも共同作曲者になるのでしょうか。

これは、コードを考えたという事実だけでは判断できません。

例えば、既存のメロディーに一般的なコード進行を付ける作業は、編曲の一部として扱われることがあります。

一方、曲の制作段階からコード、リズム、特徴的な音楽表現を複数人で組み立てている場合には、共同作曲として整理するケースも考えられます。

ただし、コード進行を考えた人を必ず共同作曲者とする法律上の一律のルールがあるわけではありません。

著作権法上の問題では、実際にどのような創作的表現が生み出されたかが重要です。

文化庁は、複数人が共同して著作物を創作した場合の著作者の扱いを説明しています。[出典1]

制作現場でのクレジットの合意と、法律上の著作者の判断は、必ずしも同じではないのです。

ピアノ伴奏や打ち込みを制作した場合

近年の音楽制作では、DAWと呼ばれる音楽制作ソフトを使い、一人で複数の楽器のパートを制作することも一般的です。

ここで重要なのは、打ち込みという作業方法そのものが、作曲か編曲かを決めるわけではないということです。

例えば、すでに完成しているメロディーをもとに、ピアノ、ベース、ドラムを打ち込んだのであれば、編曲や音源制作の作業と整理される場合があります。

一方、何もない状態からメロディーや特徴的な音楽表現を作り、打ち込みで曲を完成させたのであれば、作曲にも携わっていると考えられます。

制作例一般的な整理
既存の歌メロにピアノ伴奏を付けた編曲
既存の曲にドラムとベースを打ち込んだ編曲・音源制作
DAWで新しいメロディーを作った作曲
新しいメロディーと伴奏を一人で制作した作曲・編曲
既存のコード進行に独自のメロディーを付けたメロディーについて作曲
既存の曲を別のジャンルにアレンジした編曲。ただし許諾や権利確認が必要

つまり、「打ち込みをしたから作曲家」「ピアノを弾いたから編曲家」とは限りません。

何を演奏したかではなく、何を創作したか。

この視点が、作曲と編曲の境界を考えるうえで重要です。

ドラマの劇伴音楽では作曲と編曲をどう分担する?

ドラマや映画で使われる劇伴音楽は、作曲と編曲の境界が分かりにくくなりやすい分野です。

劇伴とは、ドラマや映画の場面を支えるために制作される音楽のことです。

歌が中心の楽曲とは異なり、ピアノやストリングス、シンセサイザーなどの楽器が主旋律を担当する曲も多くあります。

音楽監督と作曲家の役割

劇伴制作では、作品によって音楽監督、作曲家、編曲家、演奏家、音楽プロデューサーなどが関わります。

ただし、すべてのドラマで同じ制作体制が採用されているわけではありません。

例えば、音楽監督が作品全体の音楽的な方向性を考え、作曲家が各場面の曲を制作する体制も考えられます。

一方、作曲家自身が音楽監督を兼ねたり、作曲から編曲、打ち込みまで一人で担当したりする場合もあります。

ここで注意したいのは、音楽監督という肩書だけで、その人がすべての楽曲の作曲者になるわけではないという点です。

誰が曲を創作したかは、実際の制作内容によって判断する必要があります。

複数人で一曲を作る場合

例えば、次のような制作を考えてみましょう。

Aさんが曲の基本的なアイデアを作り、Bさんがメロディーや楽曲の構成を一緒に考えたとします。

さらに、Cさんがギターを録音しました。

この場合、AさんとBさんが共同作曲者となり、Cさんは演奏者としてクレジットされる、という整理が考えられます。

ただし、Cさんが独自のフレーズを創作し、それが曲の重要な表現になった場合には、単なる演奏だけだったのか、編曲や作曲への創作的寄与があったのかを検討する余地があります。

誰がギターを弾いたかだけでは、結論は出せません。

また、AさんとBさんが共同作曲者となるかどうかも、単に一緒に作業したというだけでは決まりません。

文化庁は、共同著作物について、複数人が共同して創作し、それぞれの寄与を分離して個別に利用できないものと説明しています。[出典1]

そのため、制作への参加者全員が自動的に共同著作者になるわけではありません。

インスト曲は歌モノよりも境界が曖昧になりやすい

玄ちゃんの経験では、歌モノの場合は歌のメロディーを作った人を作曲者とすることが多く、比較的整理しやすい面がありました。

しかし、インストゥルメンタル曲の場合は、主旋律、伴奏、リズム、曲構成を一体として制作することがあります。

例えば、二人でシンセサイザーやギターのフレーズを組み合わせ、曲全体を作り上げたとします。

この場合、どこまでが作曲で、どこからが編曲なのかを、制作途中で明確に分けることが難しい場合もあります。

そのため、玄ちゃんが所属していた会社の制作現場では、共同制作を始める段階で、誰が作曲者としてクレジットされるのかを必ず確認していました。

もちろん、事前に話し合えば、法律上の著作者を自由に決められるという意味ではありません。

重要なのは、実際の創作内容を確認し、権利や報酬についても認識をそろえておくことです。

作曲者と編曲者のクレジットはどう決まる?

音楽制作におけるクレジットとは、作品に関わった人の役割を示す表記です。

例えば、次のようなものがあります。

  • 作詞
  • 作曲
  • 編曲
  • ギター
  • ベース
  • プログラミング
  • サウンドプロデュース

ただし、クレジットにどの肩書が付いているかと、法律上どの権利を持つかは、必ずしも一致しません。

JASRACへの登録で作曲者が決まる?

JASRACは、音楽著作権の管理を行う団体です。

JASRACの公式資料によれば、作品届や編曲届などの情報に基づいて、管理作品の関係権利者や使用料の分配を扱っています。[出典3]

ここで誤解してはいけないのは、JASRACに名前を届け出れば、それだけで法律上の著作者であることが確定するわけではないという点です。

著作者に当たるかどうかは、実際に著作物を創作したかという問題です。

JASRACへの届出は、著作権管理や使用料分配のための重要な手続きですが、創作の経緯をめぐるすべての争いを自動的に解決するものではありません。

編曲者にも著作権はある?

編曲者にも、著作権が認められる場合があります。

文化庁は、既存の著作物に新たな創作性を加えて編曲したものは、二次的著作物として保護され得ると説明しています。[出典4]

ただし、すべての編曲が自動的に独立した著作物として保護されるわけではありません。

また、編曲によって新たな著作物が生まれたとしても、元の曲の著作権が消えるわけではありません。

原曲の権利と、編曲によって加えられた創作的表現の権利は、区別して考える必要があります。

JASRACの「編曲作品」と「公表時編曲」は違う

JASRACは、編曲に関する管理上の扱いとして、二つの制度を説明しています。[出典5]

区分JASRACでの扱い
編曲審査委員会の審査を経て承認された作品二次的著作物としての編曲作品を管理
公表時編曲一定の条件のもとで、カラオケ関連の使用料を分配する独自制度

公表時編曲については、最初にレコードとして発行される際などに付された編曲が対象となり、条件を満たす場合、カラオケ演奏使用料などの12分の1が分配される制度です。[出典5]

これは、編曲者がすべての音楽使用料について自動的に一定割合を受け取る、という意味ではありません。

また、JASRACの編曲審査を経た作品の管理と、法律上の著作権の成立そのものも区別する必要があります。

クレジットを決める際に確認したいこと

共同制作では、少なくとも次の点を確認しておくとよいでしょう。

確認項目具体的な内容
作曲者誰がどの音楽的表現を創作したか
編曲者誰が楽器構成や伴奏を考えたか
演奏者誰が実際に録音や演奏を担当したか
共同制作複数人の創作的寄与をどう整理するか
権利関係著作権の帰属、譲渡、管理委託の有無
報酬制作費、演奏料、印税などの取り決め
記録デモ音源、制作ファイル、メール、契約書など

特に重要なのは、作品が完成してから初めて話し合うのではなく、制作の早い段階で確認することです。

元ミュージシャンの視点から見る音楽制作の分業

玄ちゃんは約17年間、音楽制作プロダクションに所属していました。

前述の通り、作曲家としてはJASRACに33件の作品が登録されています。

一方、編曲家としては数百曲の仕事に携わってきました。

この二つの数字には、大きな差があります。

しかし、それは編曲の仕事が作曲より簡単だったという意味ではありません。

編曲は単なる伴奏付けではない

歌のメロディーがすでに完成していても、そこから楽曲を仕上げるには多くの作業があります。

イントロをどう始めるか。

Aメロではどの楽器を鳴らすか。

サビで音数を増やすのか、逆に減らすのか。

ギターのフレーズは歌に寄り添わせるのか、それとも対照的な動きを付けるのか。

こうした判断によって、完成する音楽の印象は大きく変わります。

玄ちゃん自身、編曲の仕事では、伴奏の内容を考えるだけでなく、実際に演奏したり、打ち込みでトラックを制作したりしてきました。

その経験から言えば、作曲と編曲は上下関係にある仕事ではありません。

異なる役割を持ちながら、一つの作品を完成させるために必要な仕事です。

ギターを録音しただけなら作曲者ではない?

玄ちゃんが経験してきた制作現場では、すでに曲の骨組みが完成しているところへギタリストが参加し、指定されたパートを録音した場合、その人は演奏者として扱われるのが通常でした。

もちろん、演奏者自身がフレーズを工夫することはあります。

しかし、その工夫が直ちに共同作曲者としての権利につながるとは限りません。

例えば、曲の途中でギターソロを弾いたとしても、その事実だけで作曲者になるわけではないのです。

一方、演奏者が楽曲の重要な音楽的表現を新たに創作した場合は、個別の事情を確認する必要があります。

つまり、演奏に貢献したことと、著作物を創作したことは、同じではありません。

玄ちゃんが制作開始時に必ず確認していたこと

玄ちゃんは、共同で作曲する仕事に携わったこともあります。

その際、制作の最初に必ず確認していたのが、「この曲の作曲者は誰になるのか」ということでした。

所属していた会社からも、クレジットや権利関係については厳しく指導されていました。

なぜなら、作品が完成してから作曲者の認識が食い違うと、関係者の間で問題になる可能性があるからです。

特にインストゥルメンタル曲では、メロディーと伴奏の境界が曖昧になることがあります。

そのため、最初の段階で役割分担を確認し、必要に応じて契約や制作記録を残しておくことが重要だと考えています。

ただし、当事者間の合意だけで法律上の著作者を自由に変更できるわけではありません。

実際の創作的寄与と、権利の取り決めをそれぞれ整理する必要があります。

玄ちゃんにとって、この確認は、音楽制作を円滑に進めるための基本的な仕事の一つでした。

まとめ:作曲と編曲の違いは、何を創作したかで考える

作曲と編曲の違いを簡単にまとめると、作曲は曲の核となる音楽的表現を生み出すこと、編曲はその音楽を具体的な構成や響きに仕上げることです。

歌モノでは、歌のメロディーを作った人が作曲者、伴奏を考えた人が編曲者となるケースが一般的です。

しかし、コード進行、楽器のフレーズ、打ち込み、インストゥルメンタル曲の共同制作では、境界が曖昧になることもあります。

そのため、次の三つを区別することが重要です。

  • 誰がどの制作作業を担当したのか
  • 誰が著作権法上の創作的表現を生み出したのか
  • クレジットや報酬、著作権管理について何を合意したのか

玄ちゃんは、作曲・編曲の仕事を通じて、制作開始時に役割とクレジットを確認することの大切さを学びました。

音楽は、複数の人の力によって完成することがあります。

だからこそ、作曲者、編曲者、演奏者、それぞれの仕事を正しく理解し、貢献を適切に扱うことが大切なのだと思います。

参考資料・情報源一覧

本記事は、以下の公的資料・公式情報を参考に作成しています。(2026年10月20日時点)

著作権・公的資料

JASRAC公式情報

コメント

タイトルとURLをコピーしました